私の愛しいアップルパイへ
これから何に専念するかを決めるのは、人生において大きな決断となることが多いです。そこに有限で貴重な時間を注ぎ込むことになるわけですから。
こういった経験の中で音楽以外によく思い出すのは、中学校の頃にハンドボール部に入ると決めたときです。
私の中学校はハンドボール部が特別強く、学校では指導が一番厳しいことで有名でした。
全国大会の常連校で、二つ上の代は全国大会を優勝したくらいでした。
私は特に運動が得意という訳ではありませんでしたが、どうせやるなら本格的にという気持ちで、ハンドボール部に入ることを決めました。
ハンドボールという、日本ではサッカーや野球と比べるとあまり馴染みのないニッチはスポーツであることも私にとって魅力的に映りました。
私がハンドボール部に入部するのを決めたのは、一見すればそれはとてもまともで健全な選択だったように見えます。しかし、あらためて思い返してみるとさほど気持ちの良い選択ではなかったと思います。
なぜなら他人の目を気にした結果選んだ道だったからです。
厳しい部活に入れば、同級生から一目置かれるかもしれませんし、もっと言えば高校受験で有利になる可能性もありました。ハンドボールという馴染みのないスポーツを選んだのも、一味違った自分を味わうのに都合が良かったに過ぎません。
私は自分で自分の道を進んでいるようで、結局のところ他人の判断に流されていたのです。しかも、私はいかにも真っ当な選択をしたのだと思っていたのですから、たちが悪いのです。
その頃すでに音楽に強く惹かれていたというのに、吹奏楽部は女子ばかりという理由で敬遠していました。女子の中に私が1人はいって、部員みんなをメロメロにしてしまうのは心苦しいですから。
それ以外にも、とりあえず忙しくない文化部に入っておいて、独自に音楽の勉強をするという道だって容易に想像できました。しかし、当時の私にはそれを選択する勇気もありませんでした。
音楽の道に向かうと決意したのはほんの少し前のことです。それは、他人の目を振り切るという点において、私にとって実に大きな転機であり決断でした。
▼今日の1曲はマシーンが暴れまわるような1曲。
貴下の従順なる下僕 松崎より